pleetm's blog

日々考えた事や読んだ本について書くブログです。自分の書いたことって相手にどう伝わるのか、興味があるので、お時間ある方はコメントしていただけると嬉しいです。このサイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載しています。

開幕ベルは華やかに

読みました。 ある大女優を殺す事件を描きつつ、演劇界の現実も緻密に描写した小説です。殺人事件をめぐるミステリーですが、演劇界の舞台裏や関係者の心情といった観点からも非常に面白く、その分野に関わりのある人はより頷きながら読めるのではないでしょ…

仮縫 有吉 佐和子

読みました。 仮縫いとは洋服を仕立てあげる前に、シルエットやデザイン、体型にあっているかなどを確認するための作業のこと。 かんたんなあらすじ この本の主人公はあるデザイナー松平ユキに腕を見込まれて、仮縫いをすることになった隆子を主人公とした物…

小説の読み方、書き方、訳し方 (河出文庫) 作者:柴田元幸,高橋源一郎 河出書房新社

読みました。 柴田元幸さんは翻訳家、高橋源一郎さんは小説家。 それぞれの考え、立場から、小説を読むとは、書くとは、訳すとは、のそれぞれについて、また、相互の関係についての対談です。 もし、小説を読みたいがどの小説から読めばいいのかわからない、…

陰翳礼讃

谷崎潤一郎の作品です。目に見えないもの、感触や湿度といったものを表現させて谷崎の右にでるものはいないのではないか、というほどのなんとも言えない質量をまとっていることが感じられると思います。 このねっとりとした、生々しさへの感性がこの本には凝…

色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年

自己の回復をテーマにした物語です。 そして、そのメッセージは、その傷の意味するところを、その理由を自身の手で明らかにすることによってしかなされ得ない。 ということのように思います。 しかし、そうであるならば、つくるが5人の完全無欠な集団から外…

常設展示室―Permanent Collection―(新潮文庫) 作者:原田マハ 新潮社 Amazon

常設展示室、それは企画展とは異なり、その美術館が常に所蔵の展示をしている場所です。そのため、企画展のような混雑や喧騒から離れた、独特なその美術館のアイデンティティとも言える場所かもしれません。 そこでは、静かに見守るように自身を観に来る者を…

青い壺 (文春文庫) 作者:有吉 佐和子 文藝春秋 Amazon

読みました。 ある職人が偶然作ることができた青い壺。その色はまるで800年前に作られ、唐から渡ってきたような色が出ているという。その壺は、売られ、買われ、盗まれ、そしてまた、売られていく。その場所場所で持ち主やその周辺の人々との関わりがある。…

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 作者:ロルフ・ドベリ サンマーク出版 Amazon

読みました。 なんとなくそうなのだろうなぁということがたくさん書いてありましたが、もう少し具体的に掘り下げて書いてほしいなぁというのが正直な感想でした。ただ、頭に置いておくことで、羅針盤となるようなものでもあると思うので、あえて抽象的なのか…

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) スコット フィッツジェラルド

読みました。 初読の感想は、何が名作たる所以なのか正直わからないというなんともこころもとないもので、なかなか感想を言葉にすることができずにいました。ただ、読後もしばらく、何かを自分に向かって静かに主張し続けていて、それは、自分はちゃんと読め…

白い薔薇の淵まで

読みました。 感想を述べるには当てはまる言葉がないような、生死に関わるレベルでの感情の濃さを感じる小説でした。 小説家の塁と同性愛の恋に落ちた主人公。塁は複雑な家庭環境から、埋めることのできない寂しさを抱えている人間でした。それが主人公と出…

69 村上龍

自身が高校生の頃を描いたのだそう。 文章にできるまでに20年かかったそうで、37歳の時に書かれていました。 こういった小説を読むと、自分の時はどうだっただろうか、と自己を反映しながらよむことになるかと思います。 そして自分もそんなふうに思い返して…

辛酸

足尾銅山鉱毒事件で奔走した田中正造の半生を描いた小説です。 この小説を読むと、田中正造は決して幸せに死んでいった訳ではないことがわかります。 むしろ、本書のタイトルである「辛酸」を舐めて死んでいったといっても過言ではありません。 公害と戦い続…

暗幕のゲルニカ

ピカソのゲルニカという作品を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、そこに込められたメッセージや制作の背景や歴史について知っている人はどれだけいるでしょうか。本書では作品の制作を克明に記録しようと試みたピカソの愛人の視点から描かれます…

平気でうそをつく人たち

邪悪とは何か。 邪悪と罪悪を区別する必要がある。 邪悪性とは、その人の罪悪を認めることを拒否することである。 つまり、罪悪感を持つことは悪いことではなく、罪悪感を持つことから目を背けようと(無意識に)する人のことを邪悪な人、という。 これは、…

弱気の虫(松本清張)

読みました。 本省に勤める課長補佐が主人公。 麻雀に溺れ、借金を重ねていく中である殺人事件が起きる、という話。 その心理描写が面白いと思いました。 物事を決めるとき、見栄や、周りの雰囲気など、自分の単純な意思だけでないものに影響されて決定する…

華岡青洲の妻

読みました。 嫁、姑という永遠とも言える争いを、江戸時代、華岡青洲という稀代の外科医師の家系の特異さととともに描く意欲作です。一見、つまらなくなるような題材かと思いきや、その時代背景や家庭の特殊さが相まって、読み応えのある物語でした。 単な…

何とかならない時代の幸福論

読みました。 タイトルに惹かれて読みました。しかし、本書の中にわかりやすい回答は示されていません。けれど、読む人が自分なりにどう突破口を見つけるか、そのヒントが隠されているように思いました。 世間に生きている 多くの日本人は、「社会」に生きず…

兎の眼(灰谷健次郎)

読みました。 有名だけど、読んだことない作家を読んでみました。 小学校が舞台の子供、親、教師達の奔走を描く小説でした。 それぞれの登場人物が魅力的に描かれています。伝えたいメッセージがとてもわかりやすく、それでいて、さまざまな角度からも読むこ…

岡潔対談集 (朝日文庫)

読みました。 数学者岡潔と司馬遼太郎、井上靖、時実利彦、山本健吉との対談。 わかるとは、 ・形式的にわかる。 ・知的理解をする。 ・意義をわかる=全体における個の位置がわかる。 の段階がある。 そして、「情緒」が認識の根底である。 未来に直面する…

とっておき作品集

読みました。 佐野洋子さんの名前を聞いたことがないひとがいるかもしれません。けれど、彼女の作品の一つである「百万回生きた猫」を読んだことのない人はあまりいないのではないでしょうか。それくらい実は有名な作家である佐野洋子さん。 彼女は童話の作…

非色 有吉佐和子

読みました。 人を分つものは何か。非色(色に非ず)。それが 本書のテーマです。 時代は戦後。 笑子は、日本にいるアメリカ軍人トムと国際結婚する。トムはニグロ(黒人)であり、トムの帰国ののち、笑子も渡米する。そこで見る黒人世界は想像を絶するもの…

ひとり暮らし (新潮文庫)

読みました。 情熱の希薄な私は愛に対する憎しみという感情にも薄くそれは処世の上では役立つかもしれませんが、それがかえって人を傷つけることもあると自覚しています。 底にあるのは無関心ですね。無関心は無関心のままでいい。本人の決断はその無関心の…

迷走生活の方法 福岡伸一

読みました。 動的平衡がモットーの福岡先生です。世の中のさまざまな出来事を生命的な観点から示唆を与えてくれます。 例えば、規範や制度については、これらを生命のありように当てはめるのは誤りと言っています。つまり、生命のありようを相対化したのが…

断弦 有吉佐和子

読みました。 有吉佐和子のデビュー作とのことです。この重厚な文章を二十歳を少し過ぎた頃に書いたということが驚きです。落ち着いた文体としっかりとした調査・取材に基づく文章です。そして、本書のキーとなる「音」を言葉で表現するという難題に挑み、そ…

新恋愛講座 三島由紀夫

読みました。 硬い文章がイメージに浮かびやすい三島由紀夫ですが、読みやすい大衆向けの作品も多く手掛けています。ただし、とっつきやすいジャンルの本であっても、やはり三島由紀夫らしい信念が貫かれていて、この嘘をつかない性格が多くの人の興味を惹く…

ヘヴン

読みました。 物事には意味がある。だから、この辛い出来事は自分への試練なのだ、これを乗り越え、克服することで私は成長するのだ。 もっともなことのように聞こえるかもしれません。だけど、この小説はその違和感にまっすぐに向き合います。 この、何事に…

宇宙と人間 七つのなぞ

読みました。 湯川秀樹は話が面白いです。今どき、面白い学者さんや研究者さんはたくさんいらっしゃるとおもいますが、当時の学者にしてはとても珍しい気がします。 理論物理といった、ある種人間の感覚を超えた分野ですから、多くの人はそんな分野の学者な…

〈責任〉の生成ー中動態と当事者研究

読みました。 中動態についての説明はここでは完全にはできませんが、能動態でも受動態でもない中間地帯があるというのは想像できるかと思います。例えば、カツアゲをした人がいる。カツアゲをするのは能動的な行動だから、当人の意思によってなされたもので…

芸人迷子(ユウキロック)

よみました。 M-1グランプリの決勝進出も決まり、また熱い戦いが繰り広げられます。 M-1グランプリが始まってから、お笑いがスポーツ的になってきたように思います。 本来争うことができるものではないはずの「笑い」というものを競う大会。 それによって、…

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima

読みました。 正直に生きることの尊さ、対象にまっすぐに向かい合うことを思い出させるような小説でした。 理系で研究に携わったことのある人は懐かしさをかんじるかもしれません。そうそう、この感じわかるなぁ、と思います。研究を通じて、発見に自分が一…