読みました。
正直に生きることの尊さ、対象にまっすぐに向かい合うことを思い出させるような小説でした。
理系で研究に携わったことのある人は懐かしさをかんじるかもしれません。そうそう、この感じわかるなぁ、と思います。研究を通じて、発見に自分が一番最初に触れているという感覚。小さい発見だけど自分の中では大きく、でもぞんざいに扱うと逃げてしまうのでは、と思うような、でもその実感は自分にしか感じられないのだ、これを文章や表という形を使って、人に見える形にしないといけない、という気持ちが内側から湧き上がってくる。自分が間違っているかもしれないし、人からしたら面白くないかもしれないものを必死の理論武装をして外に出そうとする努力。そこは狭い狭い専門分野の端っこなんだけど、それが世界の大きな真理につながっているのかもしれないというドキドキ。そういったことを懐かしくも、また、あの感覚を味わいたい、と思わせてくれるような幸せな文章でした。
その中で起こる人間模様も、こういうところが起きていたところもあったのかもしれないな、と思わされ、何とも他人事ではない感覚。
静かだけど、触れることができないくらいのものだけど、大事なもの。それを大事に持ち続けることは幸せなことなのかもしれません。