pleetm's blog

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仮縫 有吉 佐和子

読みました。

仮縫いとは洋服を仕立てあげる前に、シルエットやデザイン、体型にあっているかなどを確認するための作業のこと。

かんたんなあらすじ

この本の主人公はあるデザイナー松平ユキに腕を見込まれて、仮縫いをすることになった隆子を主人公とした物語です。「仮縫」というキーワードが、ユキと隆子の関係を示すものにもなっており、本縫をするものと、そのお膳立てをする仮縫をするものという社会の構造を示すものにもなっています。

仮縫と本縫=固定化された社会構造における生のあり方

これをどうとらえるか、つまり希望の物語と読むか、変わり得ない社会構造で生きる物語と読むのかは大いに読者に委ねられているのだと感じます、当時この小説を書いた有吉佐和子の30代前半という年齢あることを考えれば、希望の物語と読むことはできると思います。しかし、晩年の有吉佐和子の小説も合わせて読むと、必ずしもその限りではないと感じる部分もあります。ともあれ、そういった分析めいたことではなく、有吉佐和子には「生きる」という通底した強さがあり、読者の心に強く響くのではないでしょうか。その強さというのは、希望に向かって生きる、といったようなファンタジーやよくあるいいお話ではなく、どこまでも地に着いた現実的な生です。

有吉は、ただそれを肯定してくれます。そして多くの人には見過ごされる類の努力を読者に気づかせようとしてくれます。自分たち自身もそういった何気なく見過ごしている/きた、苦しみや苦悩に支えられ生きている部分があるはずです。そして、同時に今、自分たちがその状況をよくしようとしてもがいていること、そのおかげでどこかの誰かが気楽に生きられることにつながっている(かもしれない)、という連関的で重層的な社会のありようを示してくれているような気がします。

社会構造を利用した幸福はありえるのか

この構造の階層の梯子を登り、上層に行くことは可能なのでしょうか。そして、上がったところで人は幸せになるのでしょうか。

おそらく、社会階層の梯子を登り、自分たちの働きのおかげで生きてきた人々と同じ階層で暮らすこと自体は、努力次第で可能になるでしょう。ただし、たとえそこで暮らしたとしても、もともとそこで暮らしていた人々と心を通わし、共感し、満足して生きることができるのかは、わかりません。それは、六本木ヒルズに突然住むようになったことを想像して、その社会にはまじりきることができない違和感が残ることを想像できる人であればわかるのではないでしょうか。(とはいえ、今までいた下層のことを忘れ、その与えられたところに洗脳されるような形で、疑問を持つことなく馴染むことができるひともいるとおもいます。)

もう一つ思うことは、その社会の競争で梯子を上がったり、さがったりしても、それは造られた構造の中で生きているに過ぎないということです。これは、勝ち上がった人は幸せになるかもしれませんが、実際には何も解決していないのです。これは、渋滞中に、空いている!と思ってとなりのレーンに移動したとしても、渋滞は解決しないのと似ています。

どう生きるのか

このようなことを考えると、ぼくたちは自分が与えられた場所の記憶を背負って生きていくより他ないのかもしれません。この小説では、最終的に隆子がユキと並ぶデザイナーになるのか、あるいはずっと仮縫いとして生きていくのか、その答えは示されませんでした。それは、有吉自身、どちらでもいいと思っているし、隆子が仮縫いとしての歴史を忘れずに、強く生き抜くということへの信頼があったから、あえてその点を明示せずに小説を終わらせたのではないか、と感じました。

与えられた場所の記憶というのは、たとえ忘れても消えないもの、無意識への刻印だと思います。もしかしたら、本人さえも認識することのない自分にしかない傷というのが人それぞれにあるのではないか。ぼくたちにはその本人さえも見えないものにもできるだけ想像力を働かせて生きることが必要で、それが上下ではない形で人を結びつけるのではないかと感じます。

 

This novel is about relationship between a desginer Yuki and a basting worker Takako. It seems that this relationship well reflects the hierarchical structure of our society.  This is so robast that we can't change it easily.  Takako was looking for a way to move upward in the hierarchy, but it was not easy going.  Rather Yuki was so wise consously and unconsciously that Takako turned out to be taken advantage of by her.  Takako tried to revenge that, but the story ended without telling how it went.  For me, it was not a huge matter if her work resulted in success or not.  Instead, what's more important is that Takako has passion to live through the society.  This dedicated attitude highly encouraged me to survive this harsh world.

In addition, in order to get through the imparity, I thought it is important to imagine what is NOT seen visually.  There should be something like a trasnparent tatoo imprinted on our unconsciousness, which sometimes controls us.  We can't easily aware of that, but it would be indispensable to take care that we might have such things.  This consideration connect us with each other, which could lead to a society where everyone feels comfortable to live regardless of difference we have.