pleetm's blog

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暗幕のゲルニカ

ピカソゲルニカという作品を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、そこに込められたメッセージや制作の背景や歴史について知っている人はどれだけいるでしょうか。本書では作品の制作を克明に記録しようと試みたピカソの愛人の視点から描かれます。

同時に、その制作の歴史と並行して、9.11とゲルニカからインスピレーションを受けた物語が進行します。こちらの物語では、美術館のキュレーターである遥子という主人公が、自身の企画するピカソの展示に、これまで動かすことが許されなかったゲルニカを持ってくることを試み、事件に巻き込まれます。

この二つの物語がパラレルに進行することによって、ゲルニカが美術史上どれだけ重要な作品か、という遥子の熱意と知識を介しながら、ピカソが作品に込めた想いを追体験することになります。

 

この小説を読むと、ゲルニカを、あるいはある芸術作品の展示に込められた意義とは何なのか、と考えさせられます。そして、ゲルニカの場合には、戦争反対、民主主義といったシンボル的なありきたりな正義のメッセージではなく、「悲劇を繰り返さない」という、一つ一つの命を大事にしたいという痛切な思いが込められていることを知ることができました。そのために、繊細にかつ大胆に描かなければならなかったのだと思うし、だからこそ、みる人の心に迫る作品になったのだと思いました。〇〇主義を超えた、どちら側というものではない、大事なことを考えさせられる作品です。

 

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