pleetm's blog

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君たちはどう生きるか

見ました。

みんな見て楽しい

いろんな解釈ができる作品だと思います。同時にシンプルに面白い宮崎駿ジブリ映画と見てほしい、という作り手の熱意をかんじました。宮崎さんは、ファンタジーを見る主たるお客さんに子どもを想定していると思います。

だけど、宮崎さんが映画を作り始め何十年、今では、大人も楽しめるような、あるいは昔子どもだった人たちが大人になっても見る世の中になってしまった。だから、世の中では解説が欲しかったり、解釈を知りたかったりする傾向が生まれているのだと思います。だけど、作り手としては、それを求めていない、と感じます。

まずは世界観を楽しめるか、という点においてとても親切な設計になっていると思いますし、不思議な世界に誘われていく感じはジブリだな〜と思いました。

とは言っても作り手としては、これが最後になるのかもしれない、という思いもあるのも当然ですし、積み上げた経験や技術を惜しみなく一つの作品に注ぎ込みたいと考えるのも当然です。その意味で、宮崎さんの濃さみたいなものが圧縮されて表現されているとも思います。

現実世界とのリンク

今までの作品と違うなと思ったのは、理想の世界が崩れるという点です。これまでトトロにしても、千と千尋にしてもそのファンタジーの世界はその中でバランスを保ち、完結し、生態系が成り立っていました。つまり、そちらの世界にお邪魔して何か経験して帰ってくるパターンです。

しかし、今回はそのお邪魔する世界が完全ではありませんでした。大叔父さんが作ったもので、いつかほころぶものであることが示されます。大叔父から後を継ぐように言われた眞人も、「自分はこの世界を受け継ぐような人間でない」と悪意や不条理に満ちた、母親のいない現実で生きることを選択します。この眞人の選択によって、物語の中での現実世界(これも一種のフィクションではあるのですが)、と僕たちが生きている現実世界が地続きになる気がします。つまり、現実世界に生きている僕たち鑑賞者にとって、どう生きるのか、という選択を投げかける形になりました。

なぜ、こうなったのかはわかりません。でも、今回映画の中の現実と、僕たちの現実の境目をできるだけなくすことによって、その両者がつながったように感じさせる狙いかもしれませんし、切っては切れないもの、という認識に変わったのかもしれません。

これはシン・エヴァンゲリオンにも通ずるものがあるものを感じますが、詳しくは述べません。

あの世、この世、そしてその世

この世界観の構築については、もう少し記述が必要かもしれません。つまり、これまではあの世とこの世の話だったのだと思います。それで言えば、今回訪れた場所はなんとも言えない場所、つまり完全に彼方でもなく此方でもないその間とも言える場所だったのではないでしょうか。

セルフパロディが楽しい

台詞回しや場面設定など随所にニヤッとできる場面があります。

メタファーとモチーフ

しばしばこの物語の解釈を難しく感じさせたのは、メタファーとモチーフだと思います。というのは登場人物に対して、こいつは誰がモデルになっているのか、という考えさせる時間的余地も大いに残しながら物語が進んでいくからです。また、視聴者もそれを考えてしまい、そうするとよくわからない、と感じたかもしれません。

しかしながら、人間というのは一面だけで成り立っているわけではない、と考えることが自然です。つまり、どこにでも宮崎駿がおり、高畑勲がおり、鈴木敏夫がいるのです。そしてそれが場面場面で入れ替わり、時には自分と話しているように感じたかもしれません。その自然で複雑な性格の移り変わりこそが人間なのだと思わされますし、本作が他と異にしている点だとおもいます。これまでのジブリ作品はこの点をある種単純化して見せていたからこそ、わかりやすかったし親しみやすかった。だけど今回はあえてそれをしなかったのかもしれません。

また、メタファーについても複雑です。それが暗に何を意味しているのか、をわかりやすく示していません。複雑というのはもう少し性格に言えば多層的、多面的になっているということです。その解釈自体も場面場面で納得できそうなものはありますが、それが作品を通して一気通貫はせず、行き来するような構造になっています。ですので、作者としてのメタファーを読み取りつつ、今見ている映像からうけとることのできるメタファーを読み取りそれらを相互に往来し繋ぎながら見ることで、面白く見ることができると思います。

メッセージ=タイトル「君はどう生きるか」

もののけ姫だったら「生きろ」とか、メッセージ性のある言葉が視聴者を惹きつけ宣伝してきました。今回、そういった宣伝はなされませんでした。とはいえ、それも必然だと、見た後には感じます。つまり、タイトル=メッセージなので、それ以上要約した言葉を考える必要がないのです。その意味ではシンプルを突き詰めた作品ということもできるのではないでしょうか。


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スタジオジブリ絵コンテ全集23 君たちはどう生きるか (スタジオジブリ絵コンテ全集 23)

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