pleetm's blog

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現代思想入門 (講談社現代新書) 千葉雅也

読みました。

とても面白かったです。もちろん表題のとおり現代思想の入門書として読むことができますが、概念を抽象的に構造化して整理して書いてくださっているので、考え方の本として読むこともできると思います。つまり、どこで思考が止まってしまっているか、その思考を前進させるために何を考えれば良いか、というヒントになるのではないかとおもいます。

具体的に本書で書かれていることを整理しておきたいと思います。(学術的なので誤って理解しているかもしれません。)

 

ポスト構造主義とは

・複雑なことを単純化しない、ということ。

・秩序の強化ではなく、秩序からのズレ、差異を意識した上で、秩序から逃れても生きていける、というダブルシステムであり、ズレとはすなわち変化であり、一つの定まった状態ではない、と理解すること。それは、「仮固定」とその脱構築が繰り返されること。ここで、「仮固定」とは「仮定的同一性」であり、決定不可能性である。

・秩序がなく、相対主義であるからといって、それは「なんでもあり」ではない。

・二項対立からの脱構築とは、いったん良し悪しを保留し、既成秩序を疑いラディカルに「共」を模索する。

・仮定的同一性と差異の行き来は未練を伴う。その未練こそが他者性への配慮(泳がせておくということ)である。

 

 

どれもだいたい同じことを言っています。概念を理解するためには、いくつかの方法で記述をすることで理解の解像度が高まると思います。

 

社会におけるポスト構造主義

この考え方が意識されると、以下のような指摘は、個人と社会の関係における示唆とも考えられます。

・搾取される自分自身がより自律的に自分自身を用いることができないかかんがえる。それは、独立して資本家になることではない。それは単に搾取する立場に変わるだけである。

・自分自身の偶然性への開きたまたま存在しているものとしてなしうることを再発見する。

・存在の偏りを活かして、デコボコしていてもなんとか回る社会を目指す。

 

こういった記述から、単純に搾取するものとされるもの、という二項対立のどちらに立つか、ではなく、また、置かれた場所で咲きましょう、的なそこに甘んじることが善だ、という考えでもなく、個人が規範からのズレを認識した上での、その活かし方や、それでも生きていける方法の模索こそが価値のあることであり、搾取という概念から一歩進んだ尊厳のある社会像というものが朧げながら想像できる気がします。

 

現代思想の四原則

1.他者性(排除された他者性を発見する)
2.超越性(より根源的な前提と提起する)
3.極端化(他者性を極端化した状態を設定する)
4.反常識(反常識が前提としてある、と考える)

 

この考え方は仕事でも良く活用できる実践的な法則だと思いますし、議論の欠けを見つけ、前進させるのにも役に立つとおもいます。

 

包摂的な社会とはどういうことを指すのか、それを目指すにはどうすれば良いのか、思考実験をしていくためにもとても面白いとおもいました。