読みました。
入門書との位置付けですが、むしろ難しいかもしれません。
短く、簡単にしようとすると誤解を招きやすい概念、それが利他だからです。
とは言え、利他のパイオニア、若松英輔さんの言葉は、なんともいえない落ち着きと静けさと優しさがあって非常に読みやすくわかりやすい内容となっています。
もっとも面白いのは「利他」を自己と切り離して考えることはできない、という点です。最澄は「忘己利他」、空海は「自利利他」という言い方で、利他には自己との結びつきを前提としてどう取り扱うかを述べていました。
最澄は「忘己利他」により、自利が十分でなくとも利他への扉は開いていること、
空海は「自利利他」により、自己と他者の不二の道を示します。
そして、何が具体的に利他的な行いなのか、は他の本も読むとよりわかりやすいと思います。
もう一つ強調されているのは、何が利か、ということかと思います。
それは苦しみからの解放、と言い換えることができそうです。もしかしたら悲しみとも言えるかもしれません。
他人の悲しみに寄り添うこと、
自分の悲しみに居場所を作ること、
そのように受け容れるということは難しくとも、受け止めるという姿勢が自利利他の始まりのような気がしました。