pleetm's blog

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NHK出版 学びのきほん ともに生きるための演劇 平田オリザ

平田オリザさんは演劇という切り口ですがコミュニケーションの真髄だと思います。基本的に書かれていることは納得できますが、社会はもう一段ねじれているのでは?と感じるところもあります。

 

その通りだが、それが我慢に繋がるという負の側面もあるのではないか。

「社会に出たら、自分のやりたいことが一〇〇パーセント実現するほうが稀なことです。自分とは異なる意見でも、相手が何を望んでいるかを受け入れてあげると、自分の願いも八割くらいは実現するよ」

子供達が納得して聞いてくれるといいます。

ぼくもそう思います。しかし、社会はこの論理を個人が好きなようにできないのは当たり前だから我慢しなさい、わたしも我慢しているのだから、という説得のために使っていると感じてなりません。また、この理屈を社会が個人に押し付けることによって、自分が何を望んでいるかすらわからない状態にさせられているのではないでしょうか。

だからこそ、オリザさんの活動のように、小さい子たちに健全なコミュニケーションを経験させる活動が重要になってくると思います。同時に、すでにコミュニケーション不全を起こしてしまっている社会においても、大人たちが、受け入れてもらう、受け入れるという経験をもう一度できるような場所が重要になるのかもしれません。それほどに大人たちが孤独になってしまっているように感じます。

 

日本はハイコンテクストなのか。

日本がハイコンテクストな社会である、ということを認識することの重要性も指摘されています。日本社会を「わかりあう文化」「察しあう文化」とも表現されています。

この考え方に異を唱えるつもりはありません。しかし、違う側面からこのハイコンテクスチュアリティを理解することもできるのではないか、と僕は考えます。つまり、社会がコンテクストであると同時に、言葉がコンテクストに埋め込まれた言語である、という考え方です。つまり、言葉自体が意味とコンテクストを持ってしまっている。こう考えると、同じ言葉を話していても伝わらない理由がはっきりとしてきます。言い換えれば、言葉に埋め込まれた文脈への理解が異なるために、言葉の意味が理解できないと感じてしまうのでしょう。

このように考えれば文化やコンテクストが言葉を、コミュニケーションを規定している以上に、言葉自体が文化やコンテクストを形成する作用を有している、と考えられるのではないか、とおもいます。つまり、日本語をもちいてコミュニケーションを図ろうとすることは、相手の使う言葉の背後にあるコンテクストをそっくり理解してしまうか、コンテクストを除き意味として、論理を理解するか、あるいはその両方を同時に行うことが必要になります。

前者への能力が高いと共感性が高い、といわれる一方で、なんとなく喋ってわかり合った気になる、ということになります。後者が行き過ぎると、文字面しか読まない、いわゆる行間が読めない人間とみなされます。

以上から、社会のハイコンテクストを認識しておくことも大事ですが、同時に、言語自体が使用者の背景情報をまとってしまっていることに留意することが必要なのではないかと感じます。

シンパシーとエンパシー

日本人は、「シンパシー(sympathy)」を持つのは得意ですが、「エンパシー(empathy)」を持つのが苦手です。「シンパシー/同情」は、自然に湧き出てくる「かわいそう」という感情です。これに対して、「エンパシー/共感する力」は、異なる他者を理解するための、行為、態度、あるいは想像力です。

シンパシーとエンパシーは多くの人が誤解しがちな言葉なので、何度も復習が必要です。「あなた共感性がないわね」なんていってくるひとはいないでしょうか。実際のところ、その人が自身の考えを押し付けて、相手をラベリングしようとしていることから、一番共感性がないことは明白なわけですが、「わかってほしい」と感じるひとはこういったことをよく口にします。ですから、それは単なる自己愛であって、共感ではない、ということはとても大事なことだと思います。

もう少し言えば、共感というのは技術であり、ある種鍛錬すれば一定程度は身につけることのできるスキルなのではないでしょうか。それは、一度相手の側に立って世界を見渡してみる、ということだからです。

 

この本は、要約のようになっているので、他のオリザさんの本もおすすめです。

 

NHK出版 学びのきほん ともに生きるための演劇

NHK出版 学びのきほん ともに生きるための演劇

  • 作者:平田 オリザ
  • 出版社:NHK出版
  • 発売日: 2022年07月25日

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