読みました。
平野啓一郎さんの本です。
40歳世代の恋愛を描いた作品。
運命の出会いだとお互いが確信するほどに思い合う二人。だけどその二人が一緒になることはなかった。それは不可抗力のようなそうでないような出来事のせい。愛し合っていた二人はお互いのことを忘れてしまうことはなく、様々な経験をし、数年後、また出会う。
この二人の恋愛をとおして、過去、現在のあり方を考えさせられる小説でした。
恋愛に限らず、あの時ああすればよかったのではないか。もっとこうしていれば、違う現在になっていたのに。と思うことは誰しもあると思います。
人生というのは自分の意思で切り開くものなのか。
あるいは人それぞれ、運命的に何か決まってしまっているのだろうか。
人生は自分の意思で切り開くことができるとして、やはり人知の及ばないところで自分の目標に達することができなかった人があるとします。
それって、自分の目標を達成できない人とみなされてしまうのでしょうか?
自分のやりたいように、楽しく生きている人からみて、「負け組」なのでしょうか?「弱い人間」なのでしょうか。
そうではないきがします。頑張っても頑張ってもうまくいかなかった。でも、その過去から逃げていなければ、ちゃんと向き合っていれば、その後に得る経験によって、思っていたのとは違う方向ではあるけれど、どこかに前進できるのではないでしょうか?
この小説ではその変化を主人公の職業である音楽性の変化にたとえて述べられていると思います。
そして、変化の先から後ろを振り返って、自分の過去を見直した時に、納得できるわけではないけれど、何か違う見方ができるようになっている。そんな風景を目指して、後悔もしたり、反省したりして生きていくのかなぁと思いました。
この小説で何度も出てきますが、「過去は変えられる」。
これはすなわち事実(過去)の結果として心(感情とか見方)があるのではなくて、心の先に事実があるのだと思います。
人はその心を鍛えるために進んでいくのかもしれません。
そう考えれば、実は、辛い思いをしても、考えようによっては、心の糧とできる部分もあるのかもしれません。
少し、きれいごとな感じもしますが、そのように生きれればなと思いました。